[研究交流計画の概要]

1 共同研究

アジア各海外拠点施設(インド・インドネシア・タイ・フィリピン・ラオス 5 カ国、8 施設)の感染性下痢症患者並びに健常者からの糞便検体のメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析により、アジア 途上国における健常者と下痢症患者の全微生物(細菌・原虫/寄生虫・真菌)叢データベースを確立する。既に下痢症の原因として特定されている細菌・ウイルス・原虫・蠕虫・真菌を同定し、遺伝的多様 性を解明する。また、腸内からこれまで未同定の遺伝子配列を抽出し、これまで下痢の原因として特定されたいない新規原虫・蠕虫・真菌を同定する。このデータベースを利用して下痢症における細菌・ウ イルス・原虫/寄生虫・真菌叢とヒトとの相互作用を統合的に理解する。東京大学大学院医学系研究科を国内拠点コーディネート機関とし国内外のネットワーク連携を図る。

2 セミナー
初・3 年度に国内で国際シンポジウム、2 年度に海外拠点の 1 つでセミナー・研修を開催する。いずれも国内外の若手を中心にシンポの企画・運営を任せ、各拠点からの研究者の研究報告を行う。初・3 年度は、同時に国内の連携・協力機関から情報科学、メタオミクスの専門家を招集し、講演会を行い、教 育・研修を行い、若手研究者と国内専門家のネットワーク構築を促進する。ホームページ・オープンキャンパス等で積極的に広報を行い、原虫下痢症メタゲノムセンター拠点としての認知度を上げ、本プロ ジェクト終了後の活動の継続性を担保する。

3 研究者交流
日本側から若手研究者を中心にのべ 18-24 名(若手 12 名を含む)の研究者を 2 週間〜1 ヶ月海外のいずれ かの研究施設に派遣する。現地の医療スタッフとの交渉・調整、患者検体の採取・保存・移送、データ 解析・管理、更に、医学研究倫理許可の取得などを総合的に学習させ、プロジェクト後に独立した研究を運営出来るようになるための準備をさせる。同時に、海外拠点の研究者のべ 15-21 名程度を招聘し、 研修と研究交流を行う。

腸管感染症はアジア・アフリカの発展途上国において重要な健康保健問題である。統合的解析技術の進歩により、腸管感染症の原因となる微生物叢を、病原・常在微生物叢同時に解析するメタゲノム・メタトラ ンスクリプトーム解析が可能となりつつある。しかし、腸管感染症の浸淫地である途上国においては、日常的に利用できる設備・解析基盤が構築されておらず、これらの技術の応用は極めて困難である。

本事業提案では、アジアの途上国における腸管感染症罹患者と健常人における腸内微生物(原虫・寄生虫を含む)叢を網羅的に明らかにし、宿主と腸内微生物叢の相互関係を解明することを長期的な目的とする。具体的な戦略としては、アジア各国の現状に沿った解析技術・基盤の構築・共有と解析技術の教育・ 研修を短期的な目的とする。東京大学医学系研究科国際保健学専攻に国内の拠点を形成し、海外 5 カ国 8 施設の拠点と共に国際共同研究を展開する。これまでのマイクロビオーム解析は一般に腸内細菌叢の 16S rDNA 解析によるのみであり、原虫を始めとする真核生物の関与は全く理解されていない。原虫・寄生虫・真菌は腸内微生物叢の重要な部分を担い、統合的解析は不可欠である。

第1の目標として、メタゲノム・メタトランスクリプトームを用いて、アジア流行地において感染性下痢 症患者と正常者の腸管マイクロビオームを、細菌・原虫/寄生虫・真菌を含めて解析し、真核生物叢と細 菌・ウイルス叢の包含した完全データベースと解析方法を確立する。第2の目標として、細菌・原虫/寄生虫・宿主の相互作用を海外の拠点施設が独自の目的に応じて活用することができるように、データベース と解析方法を最適化し、毎年実施する国際共同セミナー・研修を通じて、各海外共同研究施設と共有する。

第3の目標として、国際共同研究セミナー、国内研修を国内の若手研究者に計画・実施させ、活発な 国際交流活動を通じて国内若手研究者の国際的リーダーシップ能力を育成する。以上、アジア 5 カ国と日 本の東大拠点+5 協力機関で構成される腸管感染症マイクロビオーム解析国際ネットワークを構築し、今後の原虫/寄生虫・真菌を含めた細菌・真核生物を網羅的に包含した腸管感染症ゲノムデータベースと解析パ イプラインの構築と継続的研究体制の基盤とする。以上の国際交流拠点の形成は、長期的には腸管感染性 の病原微生物からヒトを守る(細菌だけでなく原虫・寄生虫・真菌を含めた)腸管微生物叢の解明につながると期待され、その意義は深い。

[研究交流目標]

Marble Surface

[国内・海外機関及び主要メンバー]

[国内] 6大学・研究所
東京大学: 大学院医学系研究科国際保健学専攻

 生物医化学(野崎智義、Ghulam Jeelani、Herbert Santos、大学院生 x3)

 人類生態学(梅崎昌裕、高安伶奈、大学院生 x2)

 人類遺伝学(徳永勝士)

国立感染症研究所

 病原体ゲノム研究センター(黒田誠)

 寄生動物部(津久井久美子、泉山信司)

理化学研究所

早稲田大学(服部正平、須田亙、Chung-Chau Hon)

宮崎大学大学院医学獣医学総合研究科(菊地泰生)

慶応大学医学部大学院(山本雄広)

[海外] 5カ国7施設
インド: 国立コレラ腸管感染症研究所(Sandipan Ganguly、大学院生 x2)

インドネシア: アイルランガ大学医学部(Muhammad Miftahussurur、Myrna Adianti、大学院生x1)、パジャジャラン大学(協力拠点)(Budhi Gunawan)

タイ: マヒドン大学・熱帯医学部(Saengduen Moonsom、大学院生 x1)

フィリピン: フィリピン大学ディリマン校(Windell Rivera, Gil M. Penuliar)及びミンダナオ校(Aleyla Escueta de Cadiz)
連携 1 カ国、ラオス:熱帯公衆衛生研究所(Sengchanh Kounnavong)